
介護業界に入って、10年の月日が流れました。私にとって、アライブメディケアでの職歴がそのまま、介護職でのキャリアです。
私は35歳の時に初めて介護業界に飛び込みました。それまでの約15年は飲食業に携わり、自分の店を持つほど飲食の世界に打ち込んでいました。
しかし、オーナーとして自分の店を構えて数年、なかなか目標とする売上には届かず、このままでいいのかと考えるようになりました。そんな話を、店のカウンター越しに常連のお客様としていたところ、「Yさんは介護の世界も向いているかも」と、介護職を勧められたのです。自分にはない発想でした。
飲食業は、接客業です。料理を作ることも好きですが、料理を介してお客様と対話することが楽しく、それがやりがいでした。サービス業の視点で見ると、介護職にも共通する部分がありそうだと思いました。何といっても、介護職は世の中に必要な仕事です。
今後ますます必要性と重要度を増していくとも思い、店をたたんで介護業界に転職することを決意しました。あの時、介護職を勧めてくれた常連のお客様には、とても感謝しています。
常連のお客様がアライブメディケアに勤めていたことから、話を聞いてみるだけのつもりで会社を訪問しました。その際に話をしてくださったのが、当時ブロック長を務められていた、現社長の安田さんです。仕事に対する熱意やお人柄に共感を覚え、仕事の内容よりも先に「この人と一緒に働きたい」と強く思い、入社を決めました。
このような経緯で入社しましたから、「ど」が付くほどの初心者です。右も左も分からない35歳の男に、実際の介護の現場はなかなかシビアでした。もちろん世間並みのイメージをもって、それなりの覚悟をしていたつもりです。でも、目の前のご入居者に向き合うと、飲食のお客様とはやはり勝手が違いました。気が回らずに厳しい指摘を受けることもありましたが、とにかく焦らず丁寧に接すること、お一人お一人としっかり向き合うよう心掛けました。
表情や言葉の端々からご入居者の想いをくみ取ること、お話を聞いてそれを覚えて次の会話につなげ、重ねていくこと。それは、飲食業でお客様との関係を深めていくプロセスと似ていました。こうした接客技術や洞察力は飲食の仕事で培われた能力であり、私らしさ、長所でもあります。スタッフやご入居者とかかわる中でその力を発揮することで、だんだんと仕事や介護の世界に慣れていきました。何よりもご入居者たちがとても愛らしく、自分のアクションに対してダイレクトに反応を返してくれることがうれしくて、働きがいを感じられるようになりました。
資格も経験も知識も「ないないずくめ」でしたから、当初は非常勤スタッフとしスタート。平日は、施設内の掃除など、資格を持たなくてもできる仕事を一生懸命やり、土日は専門学校に通って、3カ月でヘルパー2級の資格を取得しました。とにかく早く資格を取り介護士としての実績を積みたい、キャリアアップして発言できるようになりたいと、燃えていましたね。常勤スタッフとして4年間勤めたのちに、介護リーダーになり、昨年(2023年)から介護主任を務めています。
入社して初めての現場では、分からないことばかりでしたが、疑問に思うことや問題が生じても、解決法を見つけられずに苦労しました。資格を取得し、経験を積み、他のホームのスタッフや本社メンバーと情報を共有する機会が増え、自分の判断や目指す方向性に間違いがないと確信できるようになり、ようやく自信が出てきました。挑戦して、壁にあたって、道が開けてきた、そんな10年です。
会社には、介護経験のない35歳の男を拾ってもらった、大きな恩があります。その恩を返すために私ができることは、仕事に、そして目の前の方に、丁寧に向き合うこと以外にありません。私が仕事で大切にしているのは、「ありがとう」を連鎖させること。誰からの「ありがとう」もそのまま受け流さず、必ず倍にしてお返ししようという気持ちで、日々人と接しています。
無礼な人も、少なからず存在します。無礼な人って、見ていて悲しいですよね。ほんの少しだけものの見方や考え方を変えたら、たちまち幸せになるのに…と思います。そういう思いで私がかかわり続けると、中には良い方向に変わっていく人も現れます。かたくなに無礼なままの人もいますが、こちらも両者を見極められるようになりますので、無礼なままの人とはそっと距離を置くようにします。会社にはHappyを伝播させたい。無礼の連鎖は無用です。
私はとことん人が好き、人が笑顔でいてくれることが好きなのだと思います。ご入居者やご家族の思いに寄り添いながら、ご入居者がここまで紡いできた人生の最終章を、希望と喜びでいっぱいにしたいと本気で思っています。
私も含めて、誰もが最期を迎えます。
「あと何回笑うことができるのだろう?」
そう自分に問いかけてみてください。そうやって目の前の人と向き合ってみてください。そうすると私は、「目の前にいるこの人を、今日も何度も笑わせたい」と、自然に思えます。そして、私のアクションにコロコロと笑ってくれる愛らしいご入居者、笑顔で接してくれるスタッフに、ありがとうという気持ちがわきあがります。自分の性格や経験が介護の現場でも活かせる、そう気付かせてくれたすべての人に、感謝しています。